資産運用に有利な少額投資非課税制度、NISAには2つの制度があります。そのため、自分にはどの制度が向いているのかわからず、「資産運用にはNISAが良いと聞いたけれど、それぞれどう違うの?」「どちらを選べ良いかわからない」と悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、NISAを使った初心者向きの資産運用方法をわかりやすく解説します。

NISA制度の説明からNISA以外の運用方法まで紹介していきますので、自分に適した資産運用方法を知りたい人、資産運用を始めたい人は参考にしてみてください。

お金を増やすために資産運用が必要な理由

資産運用とは、自分が持っているお金を使って資産を効率的に増やしていく方法です。

かつて日本の資産運用と言えば、安全に運用できて高金利の預貯金がメインでした。しかし今では、国が投資をメインとした資産運用をすすめています。

投資メインの資産運用が必要と言われている理由は、以下の二つです。

  • 長引く低金利で、預貯金だけではなかなかお金が増えないから
  • 賃金が増えるよりも税金や社会保険料が増えていて、手取り収入が下がっている人が多いから

バブル崩壊後の日本は、超低金利時代と言われるほど低い水準の金利が続いています。日本銀行の公表によると、普通預金の平均年利率は0.001%。100万円を1年預けても10円の利息しか得られません。

ここからさらに税金(20.315%)が引かれるため、実質受け取れる利息は8円です。単に預金するだけではお金が増えないのがよくわかります。

※1出典:日本銀行「統計」より「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等について(2021年12月8日)」

さらに、日本のサラリーマンの平均給与はこの20年で上がるどころか減っています。

国税庁の調査によると2003年の平均給与(年収)は448万円ですが、2022年は458 万円です。20年たってもたいして変わらないのは、税金と社会保険料の比率が増えているのが要因でしょう。

※2出典:国税庁「民間給与実態統計調査結果の概要」より平成14年度(2002年度)調査の「平均給与」
国税庁「民間給与実態統計調査結果の概要」より令和4年度(2022年度)調査の「平均給与」

手取り収入がどんどん減る中で預貯金しても、なかなかお金は増えません。そのため、「投資を中心とする資産運用でお金にお金を増やしてもらう」という流れが出てきたのです。

非課税で資産運用できるNISA制度とは

預貯金から資産運用へとシフトする流れに乗って生まれたのがNISA制度です。

通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA制度の口座内で取引すれば非課税になります。つまり、投資の利益に対してかかるはずの税金がかからなくなるのがNISA制度です。

新NISAには以下2つの制度があり、それぞれ特徴が異なります。

成長投資枠株式や投資信託などを対象に、年間240万円を無期限で非課税投資ができる
つみたて投資枠少額からの長期・積立・分散投資に適した投資信託・ETFを対象に、年間120万円を無期限で非課税投資ができる

新NISAのメリット・デメリットを見ていきましょう。

新NISAのメリット

新NISAのメリットは以下のとおりです。

  • 運用期間が無期限
  • つみたて投資枠と成長投資枠は併用可能!
  • 年間最大360万円まで投資できる
  • 非課税保有限度額は全体で1,800万円

それぞれ詳しく解説します。

運用期間が無期限

新NISAの大きな特徴の1つは、運用期間が無期限であることです。これは、成長投資枠とつみたて投資枠の両方に適用されます。2023年末までの旧NISA制度では、運用期間が5年や20年と限られていましたが、新NISAではこの制限が撤廃されました。

これにより、教育資金や住宅ローンのような中期的な資金計画だけでなく、老後の資金準備にもNISAを活用できます。また、途中で資産を解約できる柔軟性もあるため、より多くの人々が資産運用を通じて資金を準備できるようになったといえるでしょう。

つみたて投資枠と成長投資枠は併用可能!

2023年末までの旧NISA制度は「つみたてNISA」と「一般NISA」の2つの枠がありましたが、併用できませんでした。そのため年間投資額や投資先が限定されており、制限が多いと感じていた人も多いでしょう。

しかし新NISAの導入により「つみたて投資枠」と「成長投資枠」に名称が変更され、併用が可能となりました。これにより年間投資額の増加と投資先の選択肢が拡大し、自分のニーズに合った、より自由度の高い資産運用をおこなえます。

年間最大360万円まで投資できる

新NISAでは、年間投資枠が大幅に拡大されました。具体的には、成長投資枠で年間最大240万円、つみたて投資枠で年間最大120万円が設定されています。これらの枠を併用することで、年間最大360万円までの投資が可能です。つまり、月に最大30万円まで非課税で積み立てられることを意味します。

たとえば、毎月30万円を3%の利率で4年間運用した場合、元本が1,440万円、運用収益が87万9,000円となり、合計で約1,527万9,000円の資産になる可能性があります。また大きな金額だけでなく、100円や1,000円といった少額からの投資も可能なため、少額投資を希望する人にも新NISAはおすすめといえるでしょう。

非課税保有限度額は全体で1,800万円

新NISAにおける非課税保有限度額は、成長投資枠を単独で使用する場合最大1,200万円、つみたて投資枠を使用する場合には最大1,800万円までとなります。

これらの枠を併用する場合、全体で最大1,800万円まで非課税で投資が可能です。

2023年末までの旧NISA制度における一般NISAの600万円と、つみたてNISAの800万円と比較して、大幅な拡大となります。さらに新NISAでは、非課税枠内で売却した資産の限度額が翌年以降復活し、再び利用できるようになります。

この柔軟性により、長期的な資産運用が行えるようになったといえるでしょう。

資産運用にかかる税金についてはこちらで紹介しています。

新NISAのデメリット

新NISAのデメリットは、以下のとおりです。

  • 運用期限が無期限になったことで売り時が難しい
  • 年間投資枠が増えたことでいくら積み立てればよいかわからない

新NISAの無期限運用はメリットである一方、いつ売却すればよいか判断が難しいと感じる人は多いでしょう。運用を続けると、いずれは資金を利用するために売却する必要が生じますが、適切なタイミングを見極めるのは困難です。

売却のタイミングとして、以下のようなライフイベント時が挙げられます。

  • マイホームの購入やリフォーム
  • 車の購入
  • 結婚
  • 出産
  • 子どもの入学
  • 親や自分の介護
  • 転職や退職 など

上記以外にも、事前に目標金額を設定しておき、目標金額に達したときや急な出費が必要になったときに売却するのも1つの方法です。

また、新NISAでの資産売却を考える際、保有銘柄を数回に分けて売却したり、必要な分だけを取り崩して利用したりする方法もおすすめです。売却時の価格が適正かどうかは時間経過後にわかるため、一度に全て売却すると価格下落のリスクがあります。安定した価格での売却を目指す場合は、少しずつ売却することが有効です。

年間投資枠の増加により、適切な投資額の判断が難しくなるのもデメリットの1つです。投資額は、毎月の支出と収入を把握し、自由に使用できる金額の約10%を投資に充てるのがいいでしょう。急な出費や短期的な資金計画には預貯金を利用し、長期的な投資計画には残りの資金を活用することで、リスクを抑えた資金準備ができます。

目標額を設定し、逆算して投資額を決める方法も有効です。たとえば、1,000万円を25年間で準備したい場合、3%の運用を想定すると毎月約22,421円を積立てる計算になります。このように毎月の収支から考える方法や目標額を設定して考えることで、どれくらい投資すればよいかが明確となるでしょう。

NISAは一人につき1口座しか選べない!自分にあった選び方

NISA制度は「一人1口座」が基本です。

成長投資枠とつみたて投資枠NISAは併用ができます。しかし、別々の金融機関で利用することはできません。口座を決めた後に金融機関や口座の変更を変更することも可能ですが、どちらも年単位でしか変更できない点に注意が必要です。

NISAの取扱商品別に口座が開設できる金融機関を紹介します。

対象商品証券会社銀行・ゆうちょ銀行
株式投資信託
外国籍投資信託
上場株式×
上場外国株式×
国内ETF(上場投資信託)×
海外ETF(上場投資信託)×
REIT(不動産投資信託)×

このように証券会社と比較して銀行・ゆうちょ銀行には取り扱う投資商品に制限があります。そのため自分が投資したい商品がある場合には、事前に確認しておきましょう。最初にNISA口座を作るときは、よく考えて使いやすい金融機関と口座を選ぶことが大切です。

NISA以外も!初心者に適した資産運用3選

ここではNISA以外の初心者向け資産運用方法を紹介します。

ほかの資産運用も気になるという人は、参考にしてみてください。

資産運用に特化した保険商品

保険会社が販売している「外貨建て保険」と「変額保険」を活用すれば、保険で資産運用が可能です。

  • 外貨建て保険:保険料の払い込みや年金、解約返戻金の受け取りを外貨で行う保険。契約者が積み立てた保険料を原資に保険会社が外貨で運用し、為替動向によって将来の保険金額が変動する
  • 変額保険:契約者が積み立てた保険料を原資に運用会社(※)が投資信託などで運用し、運用成果によって将来の保険金額が変動する

※保険会社が選ぶ特別勘定により、運用会社が運用する

外貨建て保険は外貨運用がベースで、変額保険は投資信託の運用がベースです。ただ、契約者自身が運用を行うわけではなく、運用そのものは保険会社や保険会社が選んだ運用会社が行います。

どちらの保険も、保険金額や解約返戻金が変動する点に注意が必要です。最低限の基本保険金や最低保証利率を設定している商品もあるため、リスクとあわせて最低保証をよく確認しておきましょう。

全自動型資産運用のロボ・アドバイザー

ロボ・アドバイザーとは、AIが資産運用を代行してくれる新しい金融サービスです。

全自動型で資産運用を一任できるタイプであれば、利用者がすることは「最初にいくつか質問に答えて、引き落とし口座を設定するだけ」となっています。あとは、何もしなくてもAIがあなたの価値観や投資スタイルに適した資産配分を設定し、全世界へ分散投資してくれます。

最近では一部の会社のロボ・アドバイザーサービスがNISA口座に対応しました。これにより、NISA口座の非課税メリットを受けながらロボ・アドバイザーで全自動型の資産運用が可能です。会社によって対応可否は異なるため、運用する際は対応の有無を調べてから始めましょう。

老後のための資産運用iDeCo(個人型確定拠出年金)

資産運用の目的が「老後資金」とはっきりしている人には、老後資金の積立に特化したiDeCo(個人型確定拠出年金)を使う方法もあります。

iDeCoとは、公的年金への上乗せを目的に作られた私的年金制度です。一部の会社で退職金代わりに導入されている「企業型確定拠出年金(401k、企業型DCとも言う)」の個人型がiDeCoです。

<iDeCoの特徴>

  • 老後資金の積立を目的としているため、原則60歳まで引き出せない
  • iDeCoの口座内で運用できる商品は預金、保険、投資信託
  • iDeCoの口座内で運用した商品の利益が非課税&掛金が全額所得控除になるため、節税効果はNISAよりも高い
  • 国民年金の種別に応じて年間14.4万円~81.6万円まで掛けられる
  • 掛金は月々5,000円から始められ、1,000円単位で自由に設定できる

iDeCoのメリットは、なんといってもNISAよりも高い節税効果です。一方で60歳まで引き出せない点はデメリットですが、「老後資金を強制的に積み立てつつ、節税効果に期待したい」人に向いています。

まとめ

NISAは株式や投資信託の利益にかかる約20%の税金を非課税にできる制度です。

投資経験が豊富でアクティブな投資がしたい人は成長投資枠、少額からからコツコツ始めたい投資初心者の人はつみたて投資枠を選ぶと良いでしょう。

投資に抵抗がある、自分でやるのは面倒という場合には、保険やロボ・アドバイザーを活用する方法もあります。また老後資金の積立には、節税効果の高いiDeCoという制度も用意されています。

人によって向き・不向きは異なるため、ご自身のスタイルに適した方法を選びましょう。

運用方法の選び方に不安がある人は、資産運用に詳しいファイナンシャル・プランナーに相談しながら、ご自身に最適な方法を見つけてください。

保険コンパスなら、何度でも相談無料です

監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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