火災や自然災害などで建物や家財が受けた損害は、火災保険で補償してもらえます。しかし、火災保険にはさまざまな補償があり、契約しているプランによっては適切な補償が受けられないケースがあります。
火災保険に含まれる補償の1つに「破損・汚損等」の補償がありますが、「あまり聞きなれないため補償内容が分からない」という人も多いのではないでしょうか。
この記事では、破損・汚損等の補償に焦点を当てて、補償が適用される事例や受け取れる保険金額、破損汚損補償が必要な人の特徴や受けられないケースを説明します。
火災保険の「破損・汚損等」補償とは?
火災保険に含まれる破損・汚損等補償は、保険の対象である建物や家財に生じた、不測かつ突発的な事故による損害を補償するものです。
破損させてしまったものや程度によっては損害額が膨大になることもあります。
火災保険の破損・汚損等補償が適用される事例
火災保険の破損・汚損等補償をつけると、どういったトラブルを補償してもらえるのか、破損・汚損等補償が適用される事例をいくつか紹介します。
水栓の締め忘れによる水濡れ
水栓を締め忘れたまま水を長時間流し続けてしまい、自宅の床や家財が水浸しになることがあります。
たとえば、「お風呂の湯を溜めている間に近所に外出して、自宅に戻ったら床が水浸しになっていた」といった事例が考えられます。
通常、水栓を閉め忘れても排水溝から水が流れると考えられますが、何らかの原因で排水されなかった場合、こうした被害が起こりえます。
被害の程度によっては床だけでなくカーペットや家電製品にまで被害が拡大する恐れがあるため、損害額が膨らむリスクがあります。
子どもがテレビを壊した
子どもがいる家庭では、予測できない行動によって突然建物や家財が損傷することがあります。
たとえば、子どもがテレビに向かっておもちゃを投げ、液晶画面が破損した場合、程度によっては修理費用が10万円を超えてしまうことも。
これを自己負担すると、経済的なダメージが大きくなりますが、火災保険の破損・汚損等補償を付けていれば、損害額をカバーできる可能性が高いです。
掃除中に壁に穴をあけた
建物や家財に対する破損・汚損は、部屋の掃除中にも起こり得ます。
具体例として、「掃除中にテーブルを移動させていたら、壁にぶつけて穴が開いてしまった」「部屋の模様替えをしているときに、ベッドを移動させていたら壁に穴が開いた」といったケースが挙げられます。
程度にもよりますが、壁の穴は修理に手間や費用がかかりやすいため、経済的な負担が増えやすいです。
数十万円もの修理費用を自己負担するのは大変なので、火災保険の破損・汚損等補償を付けて保険でカバーできるようにしておくと安心でしょう。
パソコンにコーヒーをこぼして壊れた
コーヒーなどのドリンクをパソコンにこぼしてしまうと、パソコンが破損する場合があります。
キーボードだけの破損であれば、損害額はある程度抑えられるかもしれません。しかしキーボードだけではなく本体全面にかかってしまった場合、故障して買い換えしなければならなくなるケースもあります。
モデルによっては数十万円単位の損害が生じる場合もあります。破損・汚損等の補償を付ければ、こうした損害も保険でサポート可能です。
ただし、保険会社によってはデスクトップパソコンは補償されても、ノートパソコンは補償対象外としていることもあります。火災保険の加入前に、補償されるパソコンの範囲を確認しておきましょう。
引っ越し作業中にふすまに穴を空けた
破損・汚損等の補償は、部屋の掃除中だけでなく、引っ越し作業中の損害も補償対象になります。たとえば、「冷蔵庫を運んでいたら壁を傷つけてしまった」「電子レンジを落として床がへこんでしまった」といった損害も、破損・汚損等の補償でカバーできる可能性が高いです。
ただし、引っ越し先に入居する時点で火災保険に加入していなかったり、退去時にすでに火災保険の契約が終了していたりすれば火災保険そのものを使えません。
引っ越しの際は火災保険の加入時期に気をつけて予定を立てましょう。
車庫入れに失敗して自宅が破損した
突発的な事故は、自宅内だけ起きるとは限りません。「車庫入れ中に車を外壁にぶつけて壁を壊してしまった」「塀に車をぶつけて塀の一部が倒れてしまった」といった事例が挙げられます。
特に、運転免許を取得したばかりの人や急いでいる人、年齢や病気などが原因で身体機能が低下した人などは、車庫入れ時のトラブルを起こすリスクが高まります。
駐車スペースが限られていたり、駐車場前の道路が狭かったりすると、さらに破損のリスクが高まるため、破損・汚損等の補償を付けたほうが良いでしょう。
ただし、自動車そのものの破損は自動車保険で対応するため、破損・汚損等の補償は適用されません。自動車への損害をカバーしたい場合は、自動車保険の補償を充実させましょう。
「破損・汚損等」の補償で受け取れる保険金額
破損・汚損等の補償を付けると、もしものときにどれくらいの保険金を受け取れるでしょうか。
保険会社や契約プランにもよりますが、破損・汚損等の補償の保険金は次のように計算することが多いです。
- 保険金=損害額-免責金額
免責金額とは、損害額からあらかじめ決まった金額を自費で支払う(差し引く)金額です。
たとえば、契約時に免責金額を3万円に設定した場合、10万円の損害が発生すると3万円は自己負担しなければなりません。一方、損害額が2万円だった場合、免責金額を超えない部分は補償してもらえなくなります。
破損・汚損等の補償を検討したほうがいい人
火災保険の基本補償に任意でセットすることが多い破損・汚損等の補償ですが、この保険が必要な人の特徴として、次の3つが挙げられます。
- 高価な家財をたくさん所有している
- 小さい子どもがいる
- うっかりミスが多い
高価な家財をたくさん所有している
ブランドものの食器や家具、電化製品などを多く所有している人は、破損や汚損が生じたときの経済的な負担が大きくなりやすいです。
家財によっては自費で修理・交換するのが難しいものもあります。もしものときに大切な家財を守るためには、破損・汚損等の補償を付けたほうが良いでしょう。
小さい子どもがいる
先述したように、小さな子どもがいる家庭では、子どもが予想外の行動を起こして建物や家財に損害を与える可能性があります。
液晶テレビやカメラ、パソコンや壁紙など、子どもでも簡単に破損・汚損させられるものはたくさんあるため、破損・汚損等の補償の必要性は高いと言えるでしょう。
うっかりミスが多い
「自分はうっかりミスが多いタイプだ」「以前家財を壊したことがある」といった人も、破損・汚損等の補償を付けたほうが良いかもしれません。また、どれだけ気をつけていても、急いでいたり慌てていたりすると、普段ミスが少ない人でも建物や家財を破損・汚損させる可能性が高まります。
上述した破損・汚損等の補償が適用される事例を見て、「いつかこうしたミスをやりかねない」と感じた人は、補償の追加を検討しましょう。
破損・汚損等の補償が受けられないケース
破損・汚損等の補償を付けると、建物や家財のより広範囲なトラブルを補償してもらえますが、状況によっては補償対象外と判断されることがあります。
ここでは破損・汚損等の補償が受けられないケースを紹介します。
故意に破損・汚損させた場合
建物や家財が破損・汚損しても、それが故意によるものだと判断されると補償が受けられません。
たとえば、「ストレスが溜まってドアを蹴ったら壁に穴が開いた」「カメラを買い替えたいのでわざと落として壊した」といったケースは補償対象外です。
また、故意での破損・汚損を不慮の事故として申請して保険金を受け取ると、保険金詐欺と見なされる可能性もあります。悪質な場合は保険契約を解除される可能性もあります。
自宅の敷地外で破損・汚損等の事故が生じた
破損・汚損等の補償範囲は、自宅敷地内で生じた事故に限定されるため、自宅の敷地外で生じたトラブルは補償が適用されません。
たとえば、「実家の花瓶を誤って壊してしまった」「旅行にもっていったパソコンを落として壊れてしまった」といったケースは破損汚損補償の補償対象外です。
また、「他人の住宅の窓ガラスを割ってしまった」「旅行先のホテルの備品を破損させた」といったケースも補償されません。
経年劣化で破損・汚損した
自宅の敷地内で破損・汚損が生じても、それが経年劣化によるものだと判断されれば補償してもらえません。
たとえば、「経年劣化で床が弱くなっており、その上にソファーを置いたら穴が開いた」「何年も前に購入したパソコンの電源が入らなくなった」といったケースは経年劣化によるものと判断され、補償してもらえない可能性があります。
ちなみに、経年劣化で建物や家財に損害が生じた場合、破損・汚損等の補償だけでなく火災保険の基本補償も適用外になるので注意が必要です。
ペットによる破損・汚損
破損・汚損等の補償は、子どもが建物や家財に与えた損害は補償しても、ペットによる破損・汚損は補償してもらえない可能性が高いです。
これは、ペットと生活していれば、破損・汚損等の事故は突発的なものではなく、自然に発生するものだと考えられているからです。
破損・汚損等の補償は、「不測かつ突発的な事故」を補償するものです。そのため、「ペットの爪が床に当たって傷ついた」「ペットがソファーをかじって損傷させた」といったケースは補償してもらえない可能性が高いので、建物や家財の保護に努めなければなりません。
まとめ
この記事では、火災保険の破損・汚損等の補償の概要や補償される事例、破損・汚損等の補償が必要な人の特徴や補償対象外のケースを紹介しました。
自然災害とは違い、破損・汚損は通常の日常生活を送る中で起こりうるトラブルです。家族構成や居住環境、家財の種類などの要因によっては、破損・汚損が起こりやすくなるため、補償を付ける必要性が高まります。
破損・汚損等の補償は火災保険の基本補償に追加できる任意の補償なので、家族構成の変化や家財を購入するタイミングなどに合わせて備えを追加するのもおすすめです。(※)
ライフステージの変化に応じて保険を最適化させることで、より安心して日常生活を送れることができます
※始めから補償がセットになっているプランもあります
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宮里 恵
(M・Mプランニング)
保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。