医療技術の発展や生活水準の向上に伴い、人生100年時代が提言されるようになった昨今、 事故や病気による万が一の事態への備えは従来よりも重要視されています。
生命保険は、そういった日常に潜む様々なリスクをカバーする仕組みであり、 自分のライフステージに合わせて適切な保障内容を選ぶことで「お金」という大きな懸念要素を排除することができます。
一方、より保障内容を拡充させるために「2つ以上の保険商品を組み合わせたい」というニーズも増加傾向にありますが、 税金や詳しい制限を知らないために今一歩踏み出せないというケースが多くなっています。
そこで今回は、生命保険の複数加入の可否や、受取人はどうするか、 また、加入の上限について解説していきますので、人生に起こり得るトラブルに万全の備えをしていきましょう。
*1公益財団法人 生命保険文化センターによる「生命保険に関する全国実態調査」
生命保険の複数契約や加入上限を解説
生命保険に加入する際は、保険会社と契約を結ぶ必要があり、 経験のない方にとっては契約中以外の他社との契約に気が引けてしまうということもあるでしょう。
1社だけでも、主契約と特約等のオプションを組み合わせることで充実した保障を受けることが可能ですが、 更にリスクヘッジするなら複数の保険商品を組み合わせるのが有効です。
ここではまず、複数加入の可否や控除の上限について見ていきましょう。
生命保険の複数加入はできる(上限なし)
まずは、同じ保険会社の別商品の複数加入について解説します。
結論からいうと、別商品の複数加入には何の問題もありません。 自分が1つの保険商品では不足していると判断すれば、 もう1つといわず更に多くを組み合わせることも可能で、上限は設定されていません。
また、保険会社においては基本的に担当者がつきます。 そのため、担当者に相談すれば、最大限に手間を削減して適切な保険商品の提案を受けることもできるでしょう。
たとえば、死亡保険金額が500万円の保険商品に3つ加入していれば、 有事の際は合算した1,500万円が支給されるといったように比較的シンプルに考えられます。
ただし、こういったメリットは生命保険か医療保険に適用されるものです。 自動車保険を始めとする損害保険に関しては、複数の保険金を受け取ることは基本的にできないので注意しましょう。
異なる保険会社の生命保険も加入可能
1社だけではなく、2社以上の異なる保険会社の生命保険を組み合わせることも可能です。 保険商品は、会社ごとに社会事情を意識した保障内容を提供しています。 そのため、幅広いリスクに備えることができるだけでなく、 複数社の商品を比較して必要性の低いものや保険料が割高なものを洗い出して整理することもできるでしょう。
一方で、他社との組み合わせで注意したいのが、 保険金の全額を100%受け取ることができないケースもあるということです。
これは、各社との合算保険金額に上限を設けて保険金詐欺等の不正を防止しているためで、 その金額は主に以下の基準を基に算出されています。
- 年収→水準に見合った保険金額かどうか
- 年齢→15歳未満の未成年に対する高額支給は不適当という観点
- 職業→事故等の発生リスクが高いかどうか
これらは、保険金の上限額の目安となっており、 たとえば年収300万であれば年収の15倍の4500万まで、15歳未満の上限額は1,000万円、 そして高所作業や格闘家といったケガや死亡リスクが比較的高い職業の場合も3,000万円までと制限があります。
また、複数社の生命保険に加入しても、規定の上限より高額の保険金を受け取ることができないことに加えて、 各保険会社は「だれに」「いくらの保険金」をかけているかを情報共有しています。 原則として例外的な措置はないと認識した方がよいでしょう。
生命保険の複数加入では控除に上限がある
生命保険においては、保険料の控除にも注目しましょう。
年末調整や確定申告は毎年記入するものなので、 しっかり活用することで税金面の負担を減らすことができます。
控除される金額は「一般」「介護医療」「個人年金」の3種類に分けられており、 保険料が高額な順に記載していくのが基本的な形です。 しかし、これらの分野でも控除の上限が定められている点に注意しましょう。
生命保険の受取人や複数請求について解説
ここからは、複数加入における受取人や請求について具体的に解説していきます。
生命保険を複数社加入する場合は、1社に絞る場合とは様々な点で違いがあります。 検討する際は違いをしっかり押さえておくことが重要です。
生命保険の受取人は複数指定ができる
生命保険は自身の病気やケガに対するリスクヘッジだけでなく、 扶養している家族を受取人に指定することで、万が一死亡した場合にまとまったお金を残すことができます。
そして、基本的に生命保険の受取人は複数であっても問題はありません。 契約時に名前と受け取る割合を記入するだけで手続きは完了します。
また、当初1人に指定していた場合でも、途中で変更できます。 たとえば、家族が増えたタイミングで受取人を追加するケースなどが考えられるでしょう。 しかし、保険金を分配する形になるため、1人当たりの受け取り額はその分減ってしまう点に注意が必要です。 分配割合は1%から細かく割合を設定できる保険会社もあるので、ある程度コントロールしてバランスを調整するのがおすすめです。
受取人の基本的な範囲
次に、受取人に指定できる範囲を解説していきます。
生命保険を契約する上では、受取人の範囲が重要なポイントの1つなので、 よく理解した上で受取人を設定しましょう。
- 被保険者の2親等以内の血の繋がった家族
- 被保険者の戸籍上の配偶者
また、具体的な2親等以内の血族とは以下の通りです。
- 子ども
- 父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
上記の通り、配偶者の両親等は2親等以内の血族に該当しません。この点に注意して手続きしましょう。
第三者(他人)の受取人になれるケース
「2親等以内の血族」以外は、受取人に指定できないと解説しました。 しかし、一定の条件を満たすことで第三者を指定できるケースがあります。
・内縁関係のパートナー
現代社会においては夫婦関係の多様化が進んでおり、 別姓を希望する場合や婚姻制度自体を重視していない等の背景があります。
そのため、婚姻手続きを経ず事実婚を選ぶケースも珍しくないでしょう。 生命保険の制度においても、以下の条件を満たしていれば受取人に指定することができます。
- お互いに戸籍上の配偶者がいないこと
- 一定以上の同居期間があること
- 一定期間以上生計を共にしていること
事実婚は、これらを書面で証明する必要があります。 証明方法は保険会社ごとに詳細が異なるので、契約時に確認しましょう。
・同性のパートナー
最近では、条件が揃えば同性のパートナーを受取人にできる場合もあります。
住民票や保険会社の独自書類、 一部の自治体が発行するパートナーシップ証明書等で事実上の夫婦関係が確認できれば、受取人に指定することが可能です。
複数契約の請求はそれぞれの保険会社へ連絡
生命保険を請求するのは、多くの場合が事故や病気を患った際、 あるいは被保険者が亡くなってしまった際など、人生の一大事ともいえる事態が起こったときです。 このような状況下では、誰しもが混乱して上手く手続きができない可能性があります。
そのため、保険会社はそういった方々をケアすることにも長けています。 契約している保険会社に連絡をすれば、大きな問題は発生しないでしょう。
しかし、複数の保険会社で生命保険を加入している場合、それぞれに連絡する必要があり、 書類を探して電話番号を確認していては漏れてしまうことも考えられます。 そのため、携帯の電話帳に登録しておいたり、 目につきやすい場所にメモを貼っておくなど、普段から準備をしておくのがおすすめです。
生命保険の複数加入のメリット・デメリットを解説
ここからは、生命保険に複数加入する際のメリット・デメリットを解説していきます。 効果的な運用のために大切な知識なので、是非参考にして下さい。
生命保険の複数加入のメリット
まずは、複数の生命保険に加入するメリットについて解説します。
保険商品の見直しがしやすい
複数加入を検討すれば、多くの保険商品に目を通すことになります。 そのため、現在の保障内容が自分にマッチしているかどうかを比較検討することができ、 保険会社によっては契約を見直すことで更に保険料を抑えられる可能性もあるでしょう。
自分に合う保険商品の組み合わせができる
現在は幅広いニーズに対応した保険商品が用意されており、 1つだけでもある程度はトラブルに備えることができます。
しかし、ライフステージや家族構成は常に一定ではないため、 マッチする保険商品も細かく再検討する必要があるでしょう。 そういった場合に現状の生命保険を残しつつ、別の保険商品を組み合わせて不足している保障内容をカバーし、 更にマッチしたものをカスタマイズすることができるのです。
生命保険の複数加入のデメリット
次に、複数加入のデメリットについて解説します。 複数の生命保険への加入を検討する際は注意しましょう。
保険料の負担が増える
複数加入のデメリットとして、保険料がかさんでしまうことが挙げられます。
保障内容を充実させることに意識を向けるあまり、 自分の収入水準を超えた保険料にならないように調整することも大切です。
保険商品の管理が複雑化する
保険商品には、証書を始めとする書類が発行されます。 しかし、生命保険に複数加入することでこれらの管理が複雑化し、引っ越しや大掃除等で紛失してしまうリスクも考えられます。
自宅の中でも安全な場所を探して、大切な書類は1カ所にまとめて保管しておくことを心掛けましょう。
生命保険の受取人が複数の場合の注意点を解説
ここからは、受取人を複数に指定している際の注意点について解説します。 税金や受け取り手続きに関わってくるので、事前に大切なポイントを覚えておくようにして下さい。
契約者と被保険者が異なる場合「所得税」が発生
保険金の受け取りに際しては、契約者と被保険者が異なる場合は所得税が発生します。 たとえば、夫が契約者で被保険者が妻、受取人は夫であるパターンが該当します。理解に不安のある方は契約者と被保険者を同一人物にして、 死亡保険金は法定相続人である配偶者等を指定すれば、 配偶者に相続税がかかりますが、相続税の基礎控除が使えます。
保険金は受取人全員の手続きが必要
被保険者が死亡した際、複数の受取人が指定されている場合は、 指定されている全員が手続きをしなければ保険金は支給されません。
1人でも連絡を取ることができなければ手続きが滞ってしまいますので、 そういったリスクも考慮して検討しましょう。
相続税が課税される場合がある
死亡保険金は受取人の固有財産となるため、 たとえ相続放棄をしても受け取ること自体は原則可能です。
しかし、相続放棄すると、結果的に非課税対象から外れて相続税が発生する可能性もあります。
一方で、相続税には3,000万円の基礎控除に加えて、法定相続人×600万円の非課税枠が設けられています。 そのため、保険金額によってはさほど考慮する必要はない場合もあるでしょう。
生命保険の複数加入は定期的な見直しも必要
今回は、生命保険を複数加入することのメリット・デメリットや、 受取人を複数名指定する際の注意点を解説してきました。
現在は、社会事情の変化にあわせた幅広い保障内容が用意されており、 1つの保険商品だけでもある程度のリスクに備えることができます。 しかし、自分を取り巻く状況は常に一定とは限らず、現在の保障内容では不足してしまう可能性もあります。 そういった場合は、他社や同じ保険会社の別の保険商品に加入してカバーするとよいでしょう。
一方で、保険料が増えることで発生するデメリットもあります。 また、定期的に保障内容や保険金額を見直して、上限を把握しておくことも必要なので、 それらに注意しつつ、自分に最大限マッチした組み合わせを見つけていきましょう。
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