生命保険に加入すると、将来ケガや病気を患ったときなどに生じる金銭的な負担をカバーできます。しかし、生命保険は誰でも加入できるわけではなく、健康上の理由や年齢によっては加入を断られるケースもあります。

中には、生命保険に加入しやすくなるように正しい告知をしない人もいるようですが、場合によってはペナルティが課されるので注意が必要です。今回は、生命保険の告知義務違反について詳しく説明します。

そもそも生命保険の告知義務とは?

そもそも生命保険の告知義務とは、加入時に過去の傷病歴や現在の健康状態、障害の状態や職業などを保険会社に申告する義務のことを言います。告知には、保険会社が用意する告知書に書かれている質問事項に回答する方法や、医師の質問に答える方法などがあり、それぞれありのままを正確に伝えなければなりません。

保険会社によっては質問項目が多いだけでなく、詳細に回答を求められたり、場合によっては追加で調査されたりすることもあります。正しい告知ができていないと「告知義務違反」とみなされる可能性があるので注意が必要です。

告知書に記載する内容

では、告知書にはどのような内容を記載しなければならないのでしょうか。告知書の記載内容には、主に次の6つがあります。

  • 最近の健康状態
  • 病気やケガの状態
  • 健康診断や人間ドックの結果
  • 身体の障害について
  • がんについて
  • 妊娠や出産について

以下では、これらの項目について詳しく説明します。

最近の健康状態

最近の健康状態では、過去数か月で医師による診察や検査、治療や投薬を受けたかを回答します。どれくらい前まで遡れば良いかは保険会社によって異なりますが、3ヵ月程度としているところもあればそれ以上の期間を設定しているところもあります。正確な告知をするためにも、手帳や病院の領収書、健康組合からのハガキなどを参考にするのがおすすめです。

また、この項目では、病気やケガと診断されなくても「医師の診察を受けた」という事実があればすべて回答する必要があります。「薬の処方だけしてもらったから申告しなくても良い」と思う人もいるかもしれませんが、病院や診療所で薬を処方された場合も告知が必要なので、忘れずに記載しましょう。

病気やケガの状態

生命保険に加入する際は、最近の健康状態に加えて過去数年間の病気やケガの有無についても告知します。具体例として、「過去5年間で手術を受けたか」「過去5年間で1週間以上入院したことがあるか」といった質問が挙げられます。

また、入院や手術が必要な病気やケガではなかったとしても、過去数年間で高血圧や不整脈、胃潰瘍や白内障などで医師の診察を受けていれば、申告が必要になります。申告が必要な疾患は保険会社ごとに違いがあるので、該当する疾患が無いかをよく確認しましょう。

健康診断や人間ドックの結果

これまで病気やケガなどで病院を受診していなくても、過去数年間で健康診断や人間ドックで異常を指摘されていれば申告が必要です。たとえば、「会社の健康診断で精密検査が必要だと指摘された」という人は、その旨を保険会社に伝えなければなりません。

また、乳幼児健診も、病気の予防や健康の維持に必要な健康診断とみなされるので、子どもを生命保険の被保険者に設定する場合は忘れずに申告する必要があります。会社の健康診断でなくても、がん検診や脳ドックなど自発的に受ける健康診断や人間ドックも告知の対象になることも知っておきましょう。

身体の障害について

すでに身体に障害を抱えている場合、その状況を告知する必要があります。具体的な告知内容としては、次のものが挙げられます。

  • 視力や聴力、言語の障害
  • 噛んだり飲み込んだりする機能の障害
  • 手や足、指の欠損や機能の障害
  • 背骨の変形や障害

生命保険が保障対象とする障害は、特別な理由が無い限り保険契約が始まってから抱えたものに限ります。告知義務違反とみなされないためにも、正確に申告しましょう。

がんについて

生命保険のうち、特にがんを患ったときの保障を受ける場合は、過去にがんにかかったことがあるかを聞かれる可能性が高いです。がんにはさまざまな種類がありますが、白血病や骨髄腫、悪性リンパ腫や上皮内がんを含むすべてのがんを告知の対象としているケースが多いです。

「以前腫瘍があると言われたことがあるけれど、告知対象になるのか分からない」など、告知すべきか迷うこともあるでしょう。そのようなときは、自己判断せずに保険会社に相談すると、告知義務違反になるリスクを避けて加入手続きを進められます。

妊娠や出産について

妊娠や出産は病気ではありませんが、過去数年間で異常を指摘されて入院や手術をした場合、保険会社に告知しなければなりません。ここで言う手術には帝王切開も含まれています。

また、異常を指摘されていなくても、申し込み時に妊娠が分かっていれば告知の必要があります。医師の診断だけでなく、自分自身でおこなう妊娠検査で妊娠が判明しているときも申告しなければならないので、適切な申告を心がけましょう。

告知義務違反の事例を知ろう

ここまでは、生命保険に加入する際の告知内容について説明しました。適切に申告が求められる告知ですが、どのようなときに告知義務違反に該当するのでしょうか。具体的な告知義務違反の例として、次のことが挙げられます。

  • ・不整脈を指摘されていたが、告知せず医療保険に加入して後日心疾患で入院することになった。
  • ・健康診断の胸部レントゲンで異常があると指摘されていたが申告せずに生命保険に加入した。後日肺の腫瘍があることが分かり手術することになった。

このように、正しく告知しなくても生命保険に加入できますが、もし告知義務違反が発覚したら適切な保障を受けられなくなるかもしれません。以下では、告知義務違反が分かったときのペナルティについて説明します。

告知義務違反が分かるとどうなる?

告知義務違反とみなされると、次のペナルティが課される場合があります。

  • 保険金や給付金が支払われなくなる
  • 保険契約を解除される場合がある

これらのペナルティについて、以下で詳しく説明します。

保険金や給付金が支払われなくなる

告知義務違反に該当すると、もしものときに保険金や給付金が支払われなくなる場合があります。

たとえば、出産時の異常で入院したときに以前の分娩異常を告知していなければ、入院給付金などのお金を受け取れなくなる可能性があります。脳出血で手術や入院をした後に高度障害状態になったときに、高血圧や不整脈などの基礎疾患を申告していなければ、入院給付金だけでなく手術給付金や高度障害保険金も受け取れなくなるかもしれません。

生命保険に加入して保険料を支払い続けても、いざというときに保障が受けられなければ、経済的な負担は大きくなってしまいます。場合によっては資産が大きく減少し、家族の生活費や教育費がまかなえなくなるので、告知する際は漏れなく正確に記入しましょう。

保険契約を解除される場合がある

告知義務違反によって保険金や給付金が支払われなくなるだけであれば、ほかの部分で備えを維持できる可能性があります。しかし、保険会社によっては、保険契約自体を解消するところもあるため、将来の備えを失ってしまうかもしれません。

そうなると、新たに生命保険を探して再度申し込みしなければなりませんし、年齢や持病の有無によっては加入を断られることも考えられます。もし加入できても保険料が割高になったり保障が限定されるケースもあるので、納得できる備えを用意しづらくなるでしょう。

告知義務違反に時効はある?

生命保険によっては数十年単位で契約するものもあるため、告知義務違反には時効が設けられています。具体的には、保険契約が開始してから2年が経過すれば告知義務違反で契約解除されないことになっており、万が一申告漏れなどがあっても時効になれば契約が解除される可能性は低いです。

ただし、告知義務違反の内容が特に重大な場合は、2年を経過していても詐欺による取り消しを理由として、保険金や給付金が支払われない場合があります。「告知義務違反には時効があるから大丈夫」と思って適切に告知しないと、思わぬトラブルが生じるかもしれないので注意が必要です。

うっかり告知を忘れていたときの対処方法

人によっては、「生命保険の契約が始まってから告知忘れに気づいた」というケースもあるでしょう。先述したように、告知には時効があるため、2年が経過していれば契約が解除される心配は少なくなります。しかし、適切な保障を受けるには正確な告知が必要なので、なるべく早く対処したいものです。

うっかり告知を忘れていたことに気づいたら、まず保険会社に連絡しましょう。その際、証券番号を求められる場合があるので、事前に保険証券を用意しておくのがおすすめです。保険会社によって期間は異なりますが、追加告知を受け付けてもらえれば以前の告知内容に付け加えられます。

ただし、追加告知の内容によっては、保険契約の継続が難しいと判断されるかもしれません。とはいえ、後から契約を解消されると再加入が難しくなるので、告知忘れに気づいた時点で追加告知をしたほうが良いでしょう。

持病があっても入りやすい保険の種類

人によっては、「告知によって生命保険への加入を断られたらどうしよう」「持病があっても加入しやすい生命保険はないのだろうか」と思うかもしれません。持病がある人にとって生命保険への加入はハードルは高いですが、次の保険を知っておくと将来の備えを用意しやすくなります。

  • 引受基準緩和型医療保険
  • 無選択型医療保険

以下では、これらの生命保険について詳しく説明します。

引受基準緩和型医療保険

引受基準緩和型医療保険は、医療保険の中でも加入条件を緩和したタイプの医療保険です。告知項目も3~5つ程度と、一般的な生命保険の告知項目よりも少なくなっています。

また、病名や治療内容にもよりますが、入院歴や手術歴があっても加入しやすいのもメリットです。加入前の持病が悪化しても保障されるものもあるので、治療中の疾患があっても備えを用意できるでしょう。

ただし、「加入後1年間は支給される給付金額が半額」のように、支払削減期間が設けられているものが多いので注意が必要です。この期間が経過すれば給付金を満額受け取れるようになりますが、保険会社ごとにルールが異なるのでしっかり確認しておきましょう。

無選択型医療保険

無選択型医療保険は、健康状態の告知や医師の診査が不要な医療保険です。持病や年齢が原因でほかの生命保険に加入できなかった人でも備えを用意できるので、将来起こり得る不測の事態をカバーしやすくなります。

ただし、ほかの医療保険と比べて保険料が割高で、もしものときに受け取れる給付金額や保険金額が通常の医療保険よりも少なくないことが多いので注意が必要です。保険会社によっては、保障対象となる病気やケガを制限したり、加入後一定期間は保険金や給付金の支払いに上限を設けていたりするので、あらかじめルールを確認する必要があります。

まとめ

ここでは、生命保険の告知義務の概要や告知書に記載する内容、告知義務違反が分かったときに受けるペナルティや持病があっても加入できる保険の種類について説明しました。

告知すべき内容は保険会社ごとに異なるため、場合によっては何年も前の出来事を思い出さなければならないケースもあります。いざ保険金や給付金を受け取るときに告知義務違反ではないかと思われないよう、正確な告知ができるよう心がけましょう。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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