介護施設ではなく、自宅で介護をする場合には、適切な介護用品を準備する必要が出てきます。介護用品にもさまざまな種類があり、高額な費用がかかる場合もあるため、購入の必要性に疑問を感じる人もいるでしょう。

こうした疑問を持ちやすい介護用品の1つが「介護ベッド」です。今回は、介護保険で介護ベッドを利用するメリットや導入までの流れ、レンタルと購入の違いや介護ベッドの選び方を解説します。

介護保険が使える福祉用具とは?

介護で使用する福祉用具にはさまざまな種類があります。福祉用具で有名なものに車椅子や介護ベッドがありますが、すべての福祉用具が介護保険の給付対象になるわけではありません。

介護保険が使える福祉用具は、レンタルで13品目、購入で5種目です。車椅子や介護ベッド、歩行器や歩行補助つえなどはレンタルできますが、直接肌が触れるポータブルトイレや自動排泄処理装置の交換可能部品、入浴用の椅子や浴室内すのこなどは購入しなければなりません。

要介護者がなるべく自立した生活を送るには、福祉用具をうまく取り入れることが大切です。ただし、レンタルと購入では自己負担額が大きく変わる場合があるため、慎重に導入を検討しましょう。

介護保険で介護ベッドを利用するメリット

介護保険を使ってレンタルできる介護ベッドですが、ベッドの種類やレンタル期間によっては自己負担額が増えるため、導入を躊躇してしまう人もいるかもしれません。

しかし、介護ベッドを取り入れると次のようなメリットが得られます。

  • 起き上がりや立ち座りの動作が楽になる
  • 自立した生活を続けやすい
  • 体の清潔を保ちやすくなる
  • 体のトラブルを予防しやすい
  • 介護者の負担を軽減できる

以下では、これらのメリットについて詳しく解説します。

起き上がりや立ち座りの動作が楽になる

介護ベッドには、背もたれや足周りの高さをリモコンで調節できるものもあります。そのため、起き上がったり体の向きを変えたりするのが難しい人でも、うまく使えば自力で体の位置を変えられます。

また、ベッド自体の高さを変えられる介護ベッドを導入すれば、ベッドサイドに立ち上がったり車椅子に乗り移ったりする動作も簡単です。介護ベッドを使って体を動かせる範囲が増えれば、より快適に日々の生活を送れるでしょう。

自立した生活を続けやすい

体の向きや位置を変えたり、ベッドから離れたりする動作を自分でできると、自立した生活を続けやすくなります。自立した生活とは、自分でできることを自分自身でおこないながら暮らすことで、本人の生きる意欲や生活への満足度の向上に影響する重要なポイントです。

介護ベッドの導入をきっかけに起き上がりや立ち上がりができれば、「次は車椅子に乗ってみよう」「浴室でシャワーを浴びてみよう」という意欲が出てくるかもしれません。住み慣れた場所で自分らしい生き方ができれば、生活をさらに充実させられます。

体の清潔を保ちやすくなる

介護ベッドは通常のベッドよりも通気性が優れているものが多いので、湿気がこもりにくくなっています。そのため、介護ベッドを導入することで体の清潔保持にもつながります。

また、シーツ交換しやすい構造になっている介護ベッドも多いので、食事や排泄をベッド上でおこなう寝たきりの要介護者でも清潔な環境で過ごしやすくなっています。掃除などのメンテナンスも簡単なのでベッドを清潔に保てます。

体のトラブルを予防しやすい

ベッドの上で過ごす時間が長くなると、関節が硬くなったり皮膚にトラブルが生じたりするリスクが高まります。一度体にトラブルが生じると、元の状態に戻すのに時間がかかったり別のトラブルにつながったりする可能性があるため、しっかりと予防する必要があります。

上述したように、介護ベッドを導入すれば体の向きや位置を簡単に変えられます。体を動かせる範囲が広がれば、皮膚への長時間の圧迫を回避したり筋力を使う機会を増やしたりできるので、状態悪化を防ぎやすくなります。

介護者の負担を軽減できる

介護ベッドの導入でメリットが生じるのは、要介護者だけではありません。介護ベッドで高さを調節して介護すれば、着替えや食事介助などの介護を手軽におこなえるため、介護者の負担軽減につながります。

介護の方法や要介護者の状態によっては介護者の体に大きな負担がかかるため、場合によってはケガをしてしまうかもしれません。介護は長期化するケースもあるため、介護ベッドをうまく使って介護負担を軽減するのが大切です。

介護ベッドの購入とレンタルの違い

福祉用具のレンタル業者が扱う介護ベッドは種類が限られるので、中には「好みの介護ベッドを購入したい」と思う人もいるでしょう。介護ベッドを購入する場合、新品のベッドを手に入れられますし、好みのメーカーやデザイン・機能の介護ベッドを選べます。

ただし、介護ベッドを購入する場合、介護保険が適用されません。そのため購入費用は全額自己負担となります。身体状況が変わると使いづらく感じ、買い替えが必要になる可能性もあるため、慎重に選ぶ必要があります。

自己負担額を抑えつつ身体状況に合わせたベッドを導入したいのであれば、介護保険が使えるレンタルの介護ベッドがおすすめです。

介護保険で介護ベッドを利用する際の費用

介護ベッドのレンタル料は、ベッドの種類にもよりますが毎月1,000円から数千円の自己負担額が相場です。収入が一定以上になると、自己負担割合が2割や3割に上がります。

また、介護ベッドのレンタルは、要介護2~5の人は介護保険の利用を認められますが、要支援や要介護1の人は原則として介護保険の利用は認められません。

ただし、姿勢を保つのが難しい人や、体調の悪化で介護ベッドが必要になった人などは、介護ベッドのレンタル費用を助成してもらえる場合があるので、ケアマネージャーやかかりつけ医に相談してみましょう。

介護ベッドを導入するまでの流れ

導入するメリットが大きい介護ベッドですが、どのような手順で利用開始すれば良いか分からない人も多いでしょう。

要介護者が介護ベッドを導入するまでの流れは、次の通りです。

  • ケアマネージャーまたは地域包括支援センターの担当者に介護ベッド導入を相談する
  • ケアプランに介護ベッドの利用を組み込んでもらい、レンタル業者に連絡する
  • レンタル業者の訪問を受け、どの介護ベッドを導入するか決める
  • 介護ベッドの使用感を試した後に、レンタル業者と契約する

居住エリアによってはレンタル業者が複数あるため、口コミやケアマネージャーなどの助言を参考にしながら契約先を決めましょう。

適切な介護ベッドを選ぶポイント

介護ベッドはメーカーや機種によって特長が異なるため、次のポイントを意識して選びましょう。

  • 要介護者に適したサイズを選ぶ
  • 必要な付属品がそろっているか確認する
  • 安全性の高いベッドを選ぶ
  • 利用できる機能をチェックする
  • 状態に適したマットレスを選ぶ

以下では、これらのポイントについて詳しく説明します。

要介護者に適したサイズを選ぶ

標準的な介護ベッドのサイズは、長さ190cm程度、幅が90cm程度です。しかし、介護ベッドを利用する人によって身長や体重が異なります。ベッドを選ぶ際は要介護者の身長や体型に適しているかをチェックし、必要に応じてミニサイズやロングサイズを検討しましょう。

また、ベッドの幅が広いと介護者の体にかかる負担が大きくなるので、介護ベッドを使う人の要介護度が高い場合は、幅が狭いものを選ぶとよいです。

付属品がそろっているか確認する

介護ベッドには、ベッドのみを販売・レンタルしている場合と、介護ベッドに取り付けて使用する付属品がついている場合があります。付属品はサイドレールやベッドテーブルなどがあり、要介護者だけではなく介護者の負担軽減にもなります。

介護ベッドに付属品が付いている場合は、付属品がそろっているかを確認しましょう。また付属品がついていない場合は、必要に応じて別途購入を検討するのもおすすめです。

【介護ベッドの付属品の例】

  • サイドレール
  • ベッドテーブル
  • 感知センサー
  • リモコン
  • 移乗支援用具 など

安全性の高いベッドを選ぶ

介護ベッドでの事故リスクを未然に防ぐには、安全性の高い介護ベッドを選びましょう。

介護ベッドの安全性を判断する基準として、ベッドがJIS規格に基づいて製造されているかで確認ができます。JIS規格とは、介護ベッドの一定の安全性が確保されているものを指します。

また、介護ベッドの取扱説明書によく目を通し、正しい使い方を身につけるのも重要です。

利用できる機能をチェックする

介護ベッドの種類によっては、手動でリクライニングさせるものもありますが、多くの介護ベッドは、背上げ機能や膝上げ機能、高さ調節機能が付いています。

また、機能が充実した介護ベッドには、ベッドの高さや背もたれの角度を記憶してくれるものもあります。ワンタッチで好みの姿勢がとれるため、より安楽な介護生活を送れるでしょう。

状態に適したマットレスを選ぶ

介護ベッドとセットで購入が必要な用具にマットレスが挙げられます。マットレスは寝心地だけでなく、体の動かしやすさや皮膚トラブルの予防しやすさにつながるため、要介護者の状態に適したマットレスを選ぶことはとても重要です。

具体例として、寝たきりの人は体圧分散性が優れたマットレスを選び、体を動かせる人は適度な硬さがあって動きやすいマットレスを選ぶといった方法が挙げられます。マットレスによっては、目的に応じてベッドの硬さを自由に変えられるものもあるので、ほかのマットレスと一緒に検討しましょう。

介護ベッドに不具合があった場合の対処方法

介護ベッドを導入しても、しばらく使っているうちに不具合が生じる場合があります。「リモコンが使えなくなった」「サイドレールが不安定になってきた」といったトラブルが起きた場合、要介護者の安全のためにも早めの対処が必要です。

介護ベッドを購入した場合、メーカーの保証が適用になれば基本的無料ですが、保証の期限切れや適用外となれば、修理費用や部品の交換費用は基本的に自己負担になります。

レンタルの介護ベッドの場合、利用料にメンテナンス費が含まれているため、定期的にメンテナンスを実施してくれます。違和感を持った時点で連絡すればすぐに点検してくれます。

まとめ

ここでは、介護保険で介護ベッドを利用するメリットや導入までの流れ、レンタルと購入の違いや介護ベッドの選び方を説明しました。

たくさんの福祉用具から適切な物品を選ぶのは大変ですが、要介護者とその家族が介護生活をできるだけ安楽に送るには、自宅の環境をしっかり整えるのが大切です。導入前にお試しで使用させてくれる業者もあるので、複数のレンタル業者を比較してみるのも良いでしょう。

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監修者プロフィール

宮里 恵
(M・Mプランニング)

保育士、営業事務の仕事を経てファイナンシャルプランナーへ転身。
それから13年間、独身・子育て世代・定年後と、幅広い層から相談をいただいています。特に、主婦FPとして「等身大の目線でのアドバイス」が好評です。
個別相談を主に、マネーセミナーも定期的に行っている他、お金の専門家としてテレビ取材なども受けています。人生100年時代の今、将来のための自助努力、今からできることを一緒に考えていきましょう。

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